今日の読み終わり。

まぼろし

まぼろし

 第40回文藝賞受賞者である生田紗代の新刊。この人なりのカラーが出てきたようで好印象。同時収録の「十八階ビジョン」が「まさか『タイム・カプセル』のその後じゃないでしょうね!」思わずぎょっとして確認しちゃったけど、退職を決めたエピソードに「その気持ち、とてもよく判るわ」思わず共感。20代前半の女の子の内面をとても上手に掬い上げて描いてますね、この人は。
 でも表題作「まぼろし」のが良かった。デヴュー作「オアシス」を深化させたような作品。自分を鬱憤はらしのゴミ箱にした挙句、離婚して家を出ていった母親が父親と8年ぶりに復縁しようとしている。その知らせに激しく動揺する娘の内面を、痛いほど繊細に描き出している。“母親と娘”が、この人が描きたいテーマなのかな。ものすごく筆が冴えていて、とてもいいんですが。母親との関係に鬱屈したものを抱える、あるいは抱えていた女性が読んだら、痛いほど共感できるし、また救われる物語だと思う。今後も生田紗代は要チェックですな。豊島ミホもそうだけど、まだまだ化けそうだ。