本日の読み終わり

EDS緊急推理解決院 (カッパノベルス)

EDS緊急推理解決院 (カッパノベルス)

 できることなら、クリスマス・イヴの日に読みたかった。“一人の超人的探偵にすべてを任せずに、専門を細分化して総合病院のように担当を決める。それにより真実を明らかにする可能性を上げ、事件解決の効率化を狙う”ために設立された「EDS 緊急推理解決院」。EDSの2004年12月24日午前8時30分から午後6時45分までの約半日のようすを合作という形で描いたのが本書。構成が凝っていて、9人の作家による10作品が時系列順になるようにバラバラに配置されているのだ(中にはバラバラになることなく、ほぼそのままの形で短編1本がどーんと収録されてる部分もあるけど)。作家による担当部署も凝っていて二階堂黎人「ぼくちゃん」シリーズが「小児推理科」だったり、高田崇史さんが「歴史推理科」、鳥飼否宇さんが「動物推理科」、黒田研二さんのぜにーちゃんが「スポーツ推理科」で、なんと松尾由美さんが「女性推理科」なのだ!!(松尾由美さんたらやっぱり「バルーンタウン」を期待してしまうんだけど、でも時代が違うのよねえ。でも!!「バルーンタウン」シリーズファンにはたまんない嬉しいサプライズがあるのよ!ファン必読ですよ!)作品として書かれてはいなかったけど「歴史推理科」の探偵はあの方!ちらり名前だけ登場するだけなんだけど、それだけでも嬉しい。
 さて、肝心の中身はと言うと。構成の妙を活かしてミステリとしてもお話としても読み応え充分だなあと思ったのは、石持浅海「院長室」と松尾由美「女性推理科」。個人的には幕間的役割を果たしてる二階堂黎人「小児推理科」と、ぜにーちゃんご登場が嬉しい「スポーツ推理科」が好きだったなあ。高田さんの「歴史推理科」も、探偵の強烈な個性が印象に残った「怪奇推理科」、「動物推理科」も良かったな(「動物推理科」の葉古小吉って『昆虫探偵』に登場する探偵さんですよね?)。
 インデックスがついているから、短編と抜き出して読めるよう配慮も心憎いし、読み終わって「あー面白かった!」と言えるような楽しい企画本です。読み終えてから改めて表紙をじっくり見ると、思わず「おーなるほど!」叫んじゃうかも(笑)。パンダのリュックはもちろん、黒い右手もちゃんといるし(笑)。