本日の読み終わり。

月への梯子

月への梯子

 すんごく久しぶりに読む樋口有介作品。題名の美しさに惹かれ、手に取ったんですが。。。
 ボクさんは40歳。けど子供の頃の病気が原因で、小学校中学年程度の知能しかない知的障害者。親が残したアパート「幸福荘」の管理人として―ときどき、大事な用件を忘れてしまうこともあるけど―、周囲の人間に感謝を忘れず、毎日楽しく幸福に暮らしている。GWのある日、アパートの屋根の塗装を終え、梯子を降りる途中で、アパートの住人の死体を発見。と同時に、転落してしまう。奇跡的に大怪我はなかったものの、ボクさんの身の回りに重大な変化が訪れる…という物語。
 樋口有介版「アルジャーノンへ花束を」というべきか。落下のショックで賢くなってしまったボクさんが探偵となって、死体発見と同時に姿を消してしまったアパートの住人たちの正体をつきとめ、殺人犯が誰なのか探ろうとするミステリ、ではあるものの…犯人探しはまるでおまけみたい。
 それよりも賢くなったせいで、それまでボクさんに見えなかったものが見えてしまう哀しみや、見えたからこその喜びが人情味たっぷりに丁寧に描かれていて、そういう部分にしんみりと感じ入ってしまった。賢くなり、周囲の人間の悪意と善意とを知って。ボクさんも変わったし、けれど、変わらない部分もある。花壇に何を植えようか吟味したり、ふとした時に花のようすを気にかけるボクさんの姿が、とても愛しい。けれど。「アルジャーノンへ花束を」が頭にあるから、どんなラストを迎えるのか、気が気じゃない!ああ、幸せな結末を迎えられたらいいなあ!ただ、それだけを祈って読んで行き、最後の15ページで唖然とする。ど、ど、ど、どういうこと?意味不明。誰か懇切丁寧に説明してください(涙目)。ま、最後まで読んで、題名『月への梯子』が腑に落ちたのだけど。うーうー。とてもいい話です(感涙)。