本日の読み終わり 瀬尾まいこ『温室デイズ』

温室デイズ

温室デイズ

 今までの作品と文体も雰囲気もがらりと変わっていて、ものすごく驚いた。学校崩壊、学級崩壊。壊れてしまった中学3年生のクラスを何とか立て直そうと教室に残り、ひたすらいぢめを受ける少女みちると、小学校時代にいぢめを受けた経験がある、教室から離れることによってクラスを立て直す方法を模索する少女優子の、2人の視点によって物語が進みます。タイムリミットは卒業式。
 今どきの中学校ってここまで崩壊しているのかと、読んでいてぞっとした。瀬尾さんが(恐らく)現役教師ゆえの物語。2人の少女の独白に、瀬尾さん自身の思いが相当反映されているんだと思う。だけど…小説として読んだ場合、どうなんだろう? 「現実の学校教育の現場は、今、こういう風なんですよ。学級崩壊やいぢめはこうして起こるんですよ。教室から脱落した生徒たちには、相談室や学びの部屋といった受け皿が用意されているんですよ。」子供らを取り巻く状況を、ただただ解説して貰っただけのような気がする。なんだかなあ。「現場を知って貰いたい」という思いが強すぎて、エンタメ作品として昇華できてないのかも。小説として、読んでいて面白くなかったです。
 いや、面白いシーンや「さすが!瀬尾作品!」と思えるキャラクタが登場するんですよ?(パシリの斎藤くん、ね)ただ斎藤くんにしても十分に生かされてるとは思わなかったし、第一みちるの行動からしてとても不可解。気持ちは判るけど、なぜ同じ轍を踏むのか。「クラスを立て直したい」って、、、[いぢめをただひたすら耐えることなの?]。
きっとこの作品が効く&この作品を読むことによって救われる人が確かにいるんでしょうね。でも残念ながら私はそれに選ばれなかったみたい。はぁ。現役中学生の感想を聞いてみたいわあ。