本日の読み終わり 坂東眞砂子『南洋の島語り』

南洋の島語り―タヒチからの手紙

南洋の島語り―タヒチからの手紙

 タヒチに居住を移した作家坂東眞砂子による日常雑記。毎日新聞日曜版に連載された文章を再編集したものだそうです。
 タヒチと聞くと条件反射で「楽園」を思い浮かべるけれど、外から見ると実際に住んで中から見るのとでは大違いなんですよ、ま、タヒチに暮すことによって得た喜びは計り知れないんですけどね、といった内容でしょうか。
 私が暮すには体力に自信がなくてダメダメだけど、限りなく自給自足に近く、時間の束縛から逃れていて、自然の一部として生きる暮らしというのも悪くはないなと、読んでいる内に思えてくるから不思議。
 とはいうものの文化・風習・国民性の違いから、どれだけ大変な目にあってきたのか、その苦労談には同情を禁じえません(笑うに笑えず。けど、なんだかんだいってまだタヒチで生活しているってことは、いつしかタヒチ流に慣れ親しんじゃったってことなんでしょうな)。
 それと同時に、日本人の目で現代タヒチが抱える暗部・社会問題を指摘し、憂いているところが興味深いです。無垢な楽園でいられなくなったタヒチの姿が、現代日本の姿と重なるような、、、。
 冒頭と巻末に篠田英美さんによる坂東眞砂子お宅訪問記が収録されているんだけど、それを読む限り、すごく素敵なご自宅でゆったりした素敵な時を過ごされているよう。羨ましい。ぜひご自宅の写真を拝見したいものです。