本日の読み終わり 朝比奈あすか『憂鬱なハスビーン』

憂鬱なハスビーン

憂鬱なハスビーン

 第49回群像新人賞受賞作、なのだとか。新刊本コーナーで一目惚れして借りてきて読んだのだけど…主人公があまりにも痛すぎて痛々しすぎて、読むのが辛かった。誰の心の奥底にもある、誰にも触れて欲しくない部分を、ほじほじえぐってくれるんですもの。うううっ。 
 とにかく上を上を目指すことだけが人生の全てだった主人公凛子。その甲斐あってか、一流国立大を卒業し、一流企業にも就職した。結婚のため退職して家庭に入ったけれど、専業主婦の座はなぜか居心地が悪い。夫は子供を欲しがるものの、姑とは自分の果たせなかった夢を託すかのように、凛子の復職には積極的だ。でも、なぜか躊躇してしまう自分がいて…。
 単なる痛い&嫌な女だった凛子が、物語が進むうちに、大事なものを学び損ね、決して埋まらない心の空虚を見つめ、心細げに一人震えている可哀相な女の子に見えてくる。まずは自分自身を変えること。「ハスビーン」の自分にいつまでも執着せず、「前進あるのみ!」と前だけを見つめて、自分の居場所を見つけ出せますよう、祈らずにはいられません。
 「女性の生き方とは…」「女性にとっての真の幸せとは…」何気に考えさせられるけど、結局は「生活レベルが違い過ぎる玉の輿婚は大変だ」に集約されてしまうような気も(滝汗)。なかなかに現実的で社会的な小説だけど、まあ私の好みじゃありませんでした(疑問だった「ハスビーン」とは現在完了形のこと。“一発屋”とか“かつては何者だったけど、でも今はもう終わってしまったヤツ”のことなのだとか。なるほどね!)。