本日の読書 平安寿子『あなたにもできる悪いこと』

あなたにもできる悪いこと

あなたにもできる悪いこと

 平安寿子が描く悪漢小説。臨機応変トークで世渡りしてきた小者の悪党檜垣が、友人時任の愛人(?)里奈と組んで、いろんなところに顔を突っ込んで、こずるく金をかすめ取る様子を、ユーモラスにシニカルに描いた連作集です。
 表の顔がいかに品行方正でも、どんなものにも裏の顔がある。それが金が絡むことによって、醜く剥き出しになる様子が面白くって読ませます。表と裏の落差に新鮮な驚きを感じる話があった反面、「ああ、やっぱりそうなのね」程度の違いはあるものの想像した通りの話もあって、にやにやしちゃう話もありましたが。
 海千山千のツワモノどもといかにやりあって金をかすめとるのか。欲の皮が突っ張った同士が交わす腹の探りあいはワクワクするほど面白いんだけど、すかっと爽やか…な読了感とはならず、なーんか不完全燃焼。義賊的な役割を檜垣にいつの間にか期待しちゃうからかしら。なにか、物足りないんですよね。