本日の読書 皆川博子・宇野亜喜良『絵小説』

絵小説

絵小説

 この作品は皆川さんが好みの詩の一節を宇野さんに渡し、それを発想のきっかけにした絵を宇野さんが描き、詩と絵をもとに皆川さんが物語を創るという、この上なく豪華で溜め息が出ちゃうほど魅惑的なコラボ作品なのだ。
 作品のページ数自体はさほど多くないのだけど、現実と非現実の狭間をたゆかうような幻想的でセンチメンタルな独特の世界がぎゅぎゅぎゅっと濃縮されて詰っているので、1ページあたりの密度がものすごく濃いのよね。ストーリを追って読むのは野暮というもの。作家がイメージ喚起し構築した世界にしばし身を委ね、ただだた退廃的で美しい物語世界に酔ってました。うっとり。読み終えて現実に戻ってくるのが、本当に辛かった、、、。
 6編収録。6編のうち、純粋たる幻想譚という意味では「美しき五月に」が好き。もしかして皆川さんの記憶の中から立ち上がってきた物語じゃなかろうか。ここに登場する少女(少年)とは、もしかして皆川さんご自身がいくばくなりとも反映されてるのでは?と思いたくなる作品の中では「キャラバン・サライ」「塔」それに「赤い蝋燭と……」が好き。
 皆川さんが書かれる幻想小説が大好きなんだけど、プロットを練って練ってその挙句に生まれた物語ではなくて、きっと降りてくる巫女系の創作されてるんじゃないかとつくづく思う。皆川作品を日本語で読める幸せを噛み締めてます〜。
 宇野さんのイラストも素敵。イラスト単体で見ても美しいけど、小説と絡み合うことによって、より素晴らしさに磨きがかかるよう。うっとり。