保坂和志『途方に暮れて、人生論』
- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/04/21
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (67件) を見る
ワープロはモニターに集中してしまうために本当に、書くことを労働にしてしまう機械で、私は周囲との接触を知らず知らずのうちに遮断して、ただこの文章を打ち込んでいた。それはやっぱり、人生の時間を無駄にすることではないか。
(p.12)
気がつくと平気で半日以上もPCの前に座って、惰ネットしてる自分自身のことを、胸に手を当てて深く反省。
どの文章も、カチカチに固くなった頭を柔らかくほぐしてくれるだけでなく、物事を他方からも見、真摯に受け止める姿勢を教えてくれる。
迅速かつ合理的なものが求められる現代の風潮に対し、「そうじゃないんだよ。自分自身の人生にとって何が必要なのかじっくり考えるためにも、ゆっくり考えるのは決して悪いことではないし、時には立ち止まって考えることも必要なんだよ」そう語りかけてくれ、この時代に生き難さを感じている人を励ましてくれるのだ。反時代的かもしれないけど、真摯な態度と率直なもの言いで、人生について考え続ける保坂さんの言葉が、心に沁みるエッセイでした。