本日の読書 椰月美智子『しずかな日々』

しずかな日々

しずかな日々

 初めて読んだ『十二歳』がすごく良くて、新刊が出る度に読むようになった椰月作品だけど、『十二歳』より好きかもしれない。それまでのくすんだ毎日が一転した、人生のターニングポイントとなる主人公枝田の小学5年生の日々、それもきらきらと眩しい夏休みを切り取って描いた作品です。
 人見知りが激しくて、運動音痴で、いつも一人ぼっちだった主人公枝田を「えだいち」にしてくれ、外の世界へと引っ張り出してくれたクラスメイトの押野の存在がすごく良くて、夏休みの冒険ともども印象に強く残ります。
 そして、夏休みと共に始まった祖父の家での新生活は、いかにも「これぞ正しい日本の少年の夏休み!」!私の目にはきらきら輝き、眩しく映ります。無口な祖父との交流を静かに描いているのもいいですね。じんわり心が温かくなって、鼻の奥がつんとしてきそう。
 ただ能天気に光り輝く日々だけを描いているのではなく、しっかと陰となる部分、心の奥底に沈む澱をも描いているところに好感が持てます。
 「少年の日の思い出」を描いた作品。劇的なことは起らない、だけど静かでとてもいい作品だと思いました。じんわり心に効く感じかな?