本日の読書 宇月原晴明『天王船』

天王船 (中公文庫)

天王船 (中公文庫)

 ノベルズ版『黎明に叛くもの』(全4巻)巻末に、書き下ろしで収録された外伝的作品4編をまとめた作品集。短編それぞれが“「隠岐黒」=『黎明に叛くもの』”“「天王船」=『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』“「神器導く」=『聚楽』”“「波山の街―『東方見聞録』異聞」=『安徳天皇漂海記』”と緩やかに繋がっているばかりか、短編同士も時空を超えてひそかに繋がりあっているんですね。そんな企てについついうっとり。
 どの作品も「もしかしたら、そんな歴史的事実があったのかもしれない」そう読者に強く信じ込ませてしまう説得力があるんですよね。史実と虚構の混ざり具合が絶妙すぎる!どこまでが史実で、どこまでが作家による創作なのか。「天王船」「神器導く」では、まるで見てきたように描かれる光景に「さもありなん」。すっかり心を奪われてしまいました〜。クラクラ&うっとり。説得力ある「神器導く」での歴史解釈には唸りましたわ!
 読み終わった途端に、また冒頭から読み返したくなること、必至の本かと(笑)。『信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』から順を追って、宇月原作品を読み返したいです。熱烈に!