本日の読書 柴崎友香『また会う日まで』


 ゴメン。すごく好きだわこの作品。柴崎さん、大好きだーと大声で叫びたくなるぐらい好き好き大好き。 
 大阪で就職してる女の子有麻が主人公。1週間会社をお休みして、東京に住む友達の部屋を泊り歩いて、東京中をぶらぶらする。元会社の同僚で現在駆け出しの女優の女の子李花ちゃんに会ってご飯食べたり、失恋のグチを聞いたり、大学時代の友人の男の子しんちゃんちに泊って飲んだり、はとバスツアーに参加させられたり。
 有麻が上京した目的の一つが、高校時代に交際はしていなかったものの、すごく意識していた男の子と10年ぶりぐらいに再会することだったりする。
 再会によって何かが変わるのか。ハラハラドキドキしながら、読者は2人の関係の行方に注目させられることになる。。。

 私が一番感じ入ったのは、もしかしたら××の彼に会うのはこれが最後かもしれない、そんな微妙な緊迫感ある東京最後の夜の2人の間に漂う何ともいえない空気感を、丁寧に掬い上げるように描いているところ。
 途中で何度も挿入される高校時代のエピソードも秀逸。互いに意識しあってるのに、あとちょっと何かが足りなくて一歩が踏み出せず、その先に進めなかった2人。何かがあれば2人の関係は変わっていたのだろうか、なーんて泣きたくなるぐらいに哀しくて切なくて、感慨にふけってしまったわ。「また会う日まで」というタイトルが意味深で上手いですね。

 こないだ読んだ『その街の今は』が大阪の現在に過去を重ねてみる俯瞰するかのような主人公の視線が印象的な話で、この作品はそれに呼応するかのように東京の町を鋭く観察する主人公の視線が印象的な作品だった。2つで1つ、なのかもね。