本日の読書 紅玉いづき『ミミズクと夜の王』

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

 第13回電撃小説大賞受賞作。電撃文庫らしからぬ装幀&挿し絵なしを訝しく不思議に思いながら読むと…読み終える頃には「なるほどね」腑に落ちる。特に表紙イラストは、これ以上ないほどぴったりだと思えてくる。
 [物語はミミズクと「夜の王」フクロウとのラブ・ストーリ。人間性を剥奪され人の温かいぬくもりさえ知らずに生きてきた無垢なミミズクが(なぜミミズクという名前なのか、その理由に絶句!)、「夜の王」フクロウとの出会いによって、徐々に人間らしさ、温かい感情を取り戻していく。人間によって人間性を剥奪されたミミズクを血が通った柔らかな感情を持つ真の人間にするのが、人間を捨てた夜の王だというのが、何とも皮肉。ミミズクも夜の王も、それぞれがそれぞれに壮絶で重すぎる過去を背負っていて、そんな二人が出会い、次第にそれとなく心が寄り添っていく様子がいいんですよね。互いが互いを認め、別ち難いほど固く固く魂同士が結びついてからの悲劇。そして…!で、ついつい感極まって涙が。奇をてらうことなく、まっすぐでピュアで美しい物語に胸打たれまくり。心の琴線に優しく触れる作品かと。設定など、ぬるいところがちょっと気になるけど、寓話的ファンタジーの物語のトーンとは合ってるのかなあ。ある種、独特の雰囲気だもんね。『アンジェリク』あたりの木原敏江さんの絵で漫画化されたものを読んでみたいなあ!]