本日の読書 角田光代『薄闇シルエット』

薄闇シルエット

薄闇シルエット

 ひところ「自分探し」という言葉が流行ったけど、「自分らしく生きる」ことが、こんなに難しいことだったとは。
 私は私。母のようにも、妹チエのようにも、タケダくんのようにも、チサトのようにも生きられないと判りすぎるほど判っていても、ついつい自分が揺らいでしまう37歳のハナが主人公。ふと気づいたら恋人もなく友人も遠く、ぽつんと一人きりの寂しさ。彼女の弱さ、彼女が流す涙、彼女の嘆きに、つい自分の気持ちを重ねてしまう。ぐすん。
 女性って既婚未婚、子供を産む産まない、仕事の有無と絶えず選択を突きつけられていて、本当にシンドイなあと痛感した。ハナと同世代の女性に、ものすご〜く共感共鳴できる作品だと思う。
 ただ、いろいろあったけど、結局はここからがスタートライン。これからのハナの姿が見てみたいと熱烈に思う。きっと、あれこれ迷い戸惑い自問自答しながら、ときどきは後戻りしつつ、でも自分の信念にこだわりながら生きてくんでしょうね。『対岸の彼女』より好きかもしれない。