本日の読書 山田詠美『無銭優雅』

無銭優雅

無銭優雅

 いつまでもいつまでも慈雨と栄の物語が続いて、終わらなければいいのにーと願いつつ、でも読み終えてしまった本。すごく好き好き。
 慈雨と栄は同い年で42歳。数々の恋愛の修羅場をくぐり抜けてきた後に巡り合った運命の相手との、大人でしかできない無邪気な恋愛を描く。まるで『ラビット病』みたいな2人のラブラブっぷりが微笑ましい。日々「明日一緒に死ぬ」という覚悟。しんねりという表現がまさにぴったり。同時に、42歳未婚女性が置かれている「世間体」に胸が痛くなった。周囲を取り巻く父、姪っ子ら、石川さんがいい味出してます。
 途中、何度も何度も文学作品からの引用があって―たぶん、栄の蔵書の中からってことだと思うんだけど―2人の恋愛の行きつく先を暗示してるかのようで、非常に印象的[大半が未読なんだけど、私の記憶が確かならば、どの作品も死に別れする恋愛小説…じゃない?それに冒頭からして『センセイの鞄』みたい。]。ヘンに勘ぐってもしまったんだけど…もしかして…。壷井栄「あたたかい右の手」は、忘れずに読みたい。あ、中央線小説ですね(笑)。