本日の読書 松尾由美『九月の恋に出会うまで』

九月の恋と出会うまで

九月の恋と出会うまで

 松尾由美作品ではお馴染みのSF的設定と本格ミステリと恋愛小説の三位一体が、絶妙なバランスで成り立っている作品。個人的には『雨恋』より好きだわ。
 「マグカップ一杯分」のささやかな、だけど大きな奇蹟の物語。「シラノとは誰なのか?」の興味でぐいぐい読ませて「そうくるかっ!」の展開&ラストに、じんわり胸が温かくなりましたよ(感涙)。
 [この作品、松尾由美版「イルマーレ」なのね。って、映画は未見なんだけど(汗)。真相を知った後に最初から注意深く再読したら、あちこちに真相へと至る伏線が散りばめられているのに気づいて、改めて驚いちゃった]。

 女の人の場合はあれだよね。相手に見える形で尽くす。こんなに尽くしてるわたしを見て、というところがどこかにあるんじゃないか。だけど男はそうじゃなく、相手の知らないところでひそかに尽くす。そのことにロマンを感じる。惚れ込んだ相手には、男はみんな奇跡を起こしたいと思ってる。好きになった女の人のために。 p.178〜179

 この言葉に胸がじーーーーーーーん。琴線に触れまくり。もしかしたらこの作品、[『クロノス・ジョウンターの伝説』の助けられる女性側から見た作品なのかも]。