本日の読書 水森サトリ『でかい月だな』

でかい月だな

でかい月だな

 第19回小説すばる新人賞受賞作。とても気持ちの良い青春小説を読んだ気分。好き好き。
 親友だと思っていた人間に、命にかかわる怪我を負わされたら、あなただったらどうする?友情に被害者と加害者の問題、思春期の鬱屈など織り込みながら、どう逃げずにその友人と向かい合うのか、主人公の悩める姿を描く。
 主人公の悩める胸のうちを、瑞々しくまっすぐに描写している文章がいい。しっくりくる感じ。そしてファンタジックな設定が違和感なく有効に使われているところがいいですね。年下の同級生で、主人公の一時的避難場所な存在である中川がいい味出してて、かな〜りのお気に入り(はぁと)。巫女的役割を果たすツンデレかごめもいいけど、中川ほど熱心に書き込まれてないのが残念だ。しかも二人とも、バトンタッチとばかりに最終的には舞台から退場しちゃうし(汗)。役割を果たした途端に退場なんて、あまりにも非情なのでわ?ま、その後を仄めかされてはいるけれど。
 タイトルからも判るように煌々と輝く月が印象的な作品で、クライマックスの浜辺のシーンがとても幻想的&映像的で、とっても良かった〜♪(内心、もっとスゴイことになるんじゃないかと思ってたけど/汗)こうなるしかない結末だと思うけど、爽やかで前向きで。「永遠」を目指す彼らの友情に、エールを送りたくなってくる。 
 水森さんの、今後の活躍に注目です(あ、女性なのですね。なんとなく男性かと思ってた!女性と知って、腑に落ちたんだけど)。