本日の読書 埜田杳『些末なおもいで』

些末なおもいで

些末なおもいで

 翻訳家の金原瑞人さんの書評*1を読んで興味を持ち、読んだ本。第2回野性時代青春文学大賞受賞作。私はこの作品、すごく好きだ。
 体の一部がかゆくなって、何かが生えて飛んでいってしまい、最後には全身を無くしてしまう奇病「あれ」。「あれ」にかかってしまい体を失い続ける矢鳴と私との出会い。幻想的なイメージで静謐に繊細に綴られる喪失と友情の物語が、静かに胸の底へと沈んでいく。「なすすべもなく、ただ見守っていることしかできない」透明な哀しみ、流す涙が、、、胸に迫ってくる。
 ただ、若干感傷的すぎるところが欠点か。共感でき、そして愛しく思えるエピソードが多々あるところは気に入ってるんだけど。
 「些末といいながら、ぜんぜん些末じゃないじゃない!!」と読み終えると叫びたくなると思う。存在がなくなってしまうとはどういうことなのかとか、残されたものの胸に残り続ける喪失感の重みとか、いつまでも余韻が残り続けて…もう、たまんない(涙)。この作家の次回作が、私もものすごく楽しみだ。