本日の読書 宇月原晴明『廃帝綺譚』
- 作者: 宇月原晴明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/05
- メディア: 単行本
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4編ではそれぞれ元末の順帝、明の永楽帝、崇禎帝、後鳥羽院の物語が綴られるのだけど、まるで見て描いてるんじゃないかと思うような史実の迫力と、奇想天外で夢幻的な虚構の絡み具合が絶妙に巧くて、作者の力量に改めて舌を巻くことに。前作での設定が、こんな風に続いていくなんて!感動で胸が熱くなるのと同時に、着眼点に思わず脱帽。
この物語ではタイトルのように、それぞれに色が異なるものの、滅び行く帝国の帝への哀切、「諸行無常、盛者必衰」に満ち満ちている物語だったように思う。なすすべもなく朽ちていく帝国を前に、無力でしかない帝たち。亡国の帝の念に胸打たれてたまらなくなるものの、それぞれに最後の望みが残されているところが心憎い。こちらまで、救われる思いになる(で、この「最後の望み」というのが!まったくもう!上手いんだから!)。
『安徳天皇漂海記』を読んでから、読書することをお勧めしたい。幻想的かつ壮大なスケールの伝奇ロマンに、ただ酔いしれてください。中国の王朝が 元→明→清 と変遷し、明朝では永楽帝の時代がピークだったぐらい覚えていれば、予習なしでも大丈夫でしょう(個人的には、鄭和が重要な役割で登場したのに感激!/笑)。あ、後鳥羽院がどんな人物だったのかぐらいは、お勉強しておいた方がいいかも。