本日の読書 長野まゆみ『メルカトル』

メルカトル

メルカトル

 ミロナ地図収集館の受付けで働き始めたばかりの新米職員のリュスは、救済院で育った孤児だった。どこか不思議な異国を舞台に繰り広げられる、リュスを中心とする不思議な物語。
 最後まで読んでようやく「ああ、そういうことだったのね」と腑に落ちたけど……なかなかに突っ込みどころが満載な物語だ(汗)。いや、そういう読み方をしてはいけない物語なのだと、重々承知はしているんだけど。
 「ネオ・バロック様式で19世紀末に建設されたミロナ地図収集館」とか「植物の曲線が随所に使われている建物」とか「雨の日は土の匂いがする閲覧室」とか「薔薇の絵が書かれている地図」とか、そういう細部へのこだわりとか映像的イメージを楽しむ物語なんでしょうね。
 はなからリアリティを求めてはいけない非現実的な砂糖菓子のような甘くて美しい物語。とすれば、なかなかに悪くない物語です。