本日の読書 安東みさえ『夕暮れのマグノリア』

夕暮れのマグノリア

夕暮れのマグノリア

 感じやすいものの、どこにでもいる普通の女の子12歳の灯子の1年を、彼女を取り巻く6人の人達とのふれあいを絡めて描いた佳作。灯子が特別な誰かじゃなくて、読む人それぞれが自分を投影できる女の子と描かれていて、初恋や友情や人間関係に悩み迷い傷つきながらも、自分を見失わないところがすごく良かった。
 各話とも必ず不思議な体験に遭遇し、立ち竦む灯子の手助けとなるのもいい感じ。この年頃の少女ゆえの特別なのかしら。タイトルにもなったおばちゃんとマグノリアのエピソードが一番好き。

 花や猫みたいにふれられるものや、星や空気みたいにはかれるものだけがぜんぶじゃない。
 さわることもはかることもできない、ふしぎなものがあるってこと。
 世界は見えているものだけでできているんじゃないってこと。(p.4)

 読み終えるとこの言葉が重みを持って思い起される。そして温かい思いがじんわりと胸に広がる。
 大人が読むと、ちょっとご都合主義的に感じてしまうところもあるけど、思春期の青少年(あ、特に女の子ね)にこそ読んで、感じて欲しいなと思う作品だった。
 初めて安東作品を読んだんですが、好感触。追いかけて少しづつ作品を読んでいきたい。