本日の読書 桂望実『明日この手を放しても』
- 作者: 桂望実
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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最初の頃は妹も兄も、「どっちもどっち。なんでそんなところで衝突しちゃうかなー(怒)」どちらにも感情移入できず、読んでいてイライラしていたものの、10年も経った頃には…(感涙)。中途失明も母親の事故死も父親の失踪も、確かに悲劇には違いないが、衝突しつつもいざとなったら頼れる存在が身近にいたからこそ、乗り越えられたんだろうな。そりゃないにこしたことはないけど、もし共に乗り越えなければならないもろもろがなかったら、互いに互いの良さが分からず、人間としても成長せずにそのまんまだったのか?と思ったら、ぞっとした。ちょっとしたきっかけで、人間はより良い方向へと、変われるものなんだねえ。兄弟っていいな。いざとなったら頼れる存在がいるのっていいなと、羨ましくて仕方がなかった。
派手さがまったくない地味な話ではあるものの、じんわりしみじみとする家族物語。単なる美談ではなく、人間の矮小さ、嫌らしさもきちんと描いているところに好印象。この作家の次回作にも、期待!