本日の読書 近藤史恵『モップの魔女は呪文を知ってる』

 女清掃人探偵キリコちゃんシリーズ第三弾。派遣された先で起こる不可解な事件を、名推理ですっきり解決リフレッシュしてくれる日常の謎系のミステリ。読んでいて思ったけど、『サクリファイス』の近藤さんもいいけど私には、こっちの近藤さんの方がいかにも「らしく」て、好きだなあ。生き生きと伸びやかに書かれてる気がする。キリコちゃんの名推理によって、バイト先で友達になった人たちが自分が抱える悩みと向き合える勇気を持ち、その結果、ほんのちょっぴり幸せになるようすがすごく良かった。胸がじんわり温かくなる。
 猫と犬との違いはあれど「愛しの王女さま」は、近藤さんしか書けないお話だと思う。「第二病棟の魔女」も良かった。近すぎるゆえに見えないものはあるし、勝手に抱いた先入観がひっくり返される驚きもある。
 心を疲労させるうんざりするような悪意は、確かに存在する。だけどキリコちゃんの何気ない真摯なアドバイスによって、登場人物らが身構えるために必要以上に込めていた力がすっと抜けて身軽になる様子に、こちらまで救われた気分になる。言葉の一つ一つが、読み手であるこちらの心にまで沁みてくる。
 キリコちゃんが万能の存在ではなく、人一倍柔らかい心を持ち、時に戸惑い傷つきひっそりと涙をこぼす女の子と描かれるのもいいなあ。ものすごく共感できる。キリコちゃん、だーい好き!掃除スタイルは相変わらず、奇抜だけど(汗)。
 シリーズ1冊目から、ちゃーんと時間は流れているんですねえ。あの人が……!!更なる続編、希望!!“天使”“モップの精”“モップの魔女”と来て、次なる作品でキリコちゃんは、なんと形容されるのかしら?