本日の読書 小川洋子『夜明けの縁をさ迷う人々』

夜明けの縁をさ迷う人々

夜明けの縁をさ迷う人々

 小川洋子が描く奇妙な味の物語集といった観のある作品集。ふとした瞬間に現実を踏み外し、近しいところにある非現実で歪んだ異界へ紛れ込んでしまった人々の姿を描いていて、なかなかに好み。こーいう小川洋子の作品世界も好き好き好き!
 特に強烈だったのは、エレベーターの中で生まれ育った少年の奇妙な生涯を描いた「イービーのかなわぬ望み」と、放浪の涙売りの恋「涙売り」、老嬢が物語る祖父の形見にまつわる話「ラ・ヴェール嬢」など。
 「ラ・ヴェール嬢」はつい森茉莉を連想してしまったわ。それと千夜一夜物語。現か夢なのか、時空を超えて官能を刺激する物語の数々を語り終えた時、語り手であるラ・ヴェール嬢は、、、。奇妙で物悲しくって、でも生々しく物語が立ち上がってくる。
 好き嫌いが分かれそうだけど、私は好みだ。こんな作品集、他にあったらぜひ読んでみたい。