本日の読書 中島京子『冠・婚・葬・祭』

冠・婚・葬・祭

冠・婚・葬・祭

 ああこの連作集、ものすごく好きだ!
 「冠(成人式)」「婚(お見合い)」「葬(葬儀)」「祭(お盆)」をテーマとして織り込み、人と人との出会いが引き起こす悲喜こもごもを、温かいタッチで描いた連作集。前の話に登場した人物が少しだけ重なって続いていくので、その重なり具合を確かめながら読むのも、楽しかった。
 一番好みだったのは、いわゆるお見合いおばさんが、引退記念で臨んだ人生最後のお見合いの顛末をコミカルに描いた「この方と、この方」。思わぬ結果に、ついついにんまり。たった一日だけ一緒に過ごした老女との思い出を描く「葬式ドライブ」。そうと断定はされないものの、見ず知らずの老女の人生に触れることになる主人公。その結果、老女が赤の他人でなく心に残る特別な存在になるのがいい。最後の送り盆での出来事を描いた「最後のお盆」も、日本人としての原風景への郷愁が琴線に触れ、読んでいるうちに胸の奥底からこみ上げてくるものがあって、鼻の奥がつーんとしてきて困った。「老い」だの「死」だのが、目を背ける訳にはいかない自分からそう遠くないものになってきたからかしらん。しみじみと噛み締めるほどに、いい作品ばかりだ。
 大好きな作家なのに、積んでる作品が多すぎ!積読消化して、早く著作をコンプしたいものだ。