本日の読書 松浦寿輝『川の光』

川の光

川の光

 川の光を求めて!
 あの芥川賞受賞作家の松浦寿輝さんが、動物ファンタジーを書かれたと知ってビックリ。新聞連載小説だったんですね。驚きつつ読んだんですが、ヘンに深読みなんかしちゃダメ!素直に物語に身を委ねないと、面白味を味わえない。ヘンに鬱屈して汚れちまった本読みには眩しい、心洗われるかのような物語でした。
 小さな小さなネズミたちの、大きな大きな冒険の物語。住み慣れた川岸を追われ、新天地を求めて川を溯る旅にでるタータとチッチの兄弟とおとうさんの親子ネズミ三匹。彼ら三匹の冒険の旅は、天敵に襲われたり、種族を超えた友情が芽生えたりと盛りだくさん。手に汗握るハラハラどきどきのスリルを味わったり、互いに互いを慈しみ合う親子愛、兄弟愛のさりげない素晴らしさに胸打たれて、じんわり心が温かくなる。
 この地球に生きているのは、人間だけじゃないってことを、さりげなく教えてくれる優しい物語。ネズミも人も、同じ命。「生きる」ということについて、考えさせられる。琴線に触れたのは、この部分。

ちっぽけなネズミがこの世で過ごす束の間の生の時間など、ほんのまばたき一つの出来事にすぎない。でも、その一瞬こそは、途方もない奇蹟なのだ。とうてい信じられないような、畏怖すべき驚異なのだ。p.367

 ネズミ視線になって、この世界を眺めてみたくなる。私たち人間が知らないだけで、こんなにも豊かな世界が広がっているのかもしれない。
 見返しの部分に地図があったり、本文中にふんだんにイラストがあるのが嬉しい。「どのヘンまで旅が進んだのかしらん?」いちいち地図を確認しながら読み進めるのが、めっちゃ楽しかった。まだまだ物語世界が広がりそう。にやにや(笑)。子供が大きくなったら、ぜひ読ませたいな。そうそう『冒険者たち』に『ウォーターシップダウンのうさぎたち』がめっちゃ読みたくなった!!!