本日の読書 ジョゼフ・ディレイニー『魔使いの呪い』

魔使いの呪い (sogen bookland)

魔使いの呪い (sogen bookland)

 あとがきの解説で、上橋菜穂子さんが語ってることに、まったくの同感。「七番目の息子の七番目の息子」で左利きゆえに、魔使いの弟子になったトムのハラハラドキドキの冒険&成長譚ではあるものの、ありがちな物語のようでありがちな物語ではない。前巻は物語への導入部ということで、正直、まったくピンと来なかったんだけど、本格的に物語が動いてくるこの2巻では俄然物語に引き込まれて、途中から佇まいを正して読むことに。
 前巻ではピンと来なかった「魔使い」という職業が、教会から迫害される立場、いわば教会にとっての敵であり悪である存在というのが、ずしんと心に重く圧し掛かってくる。その教会すら、無実の人間を魔女と断定し殺してしまう、必ずしも正義であり善とはいえない存在で。この物語の中では、絶対の正義も悪も存在しない。登場人物らはそして読者も、絶えず正義と悪のはざまで揺らぎ、「何が正義なのか」自分の頭で考え、絶えず悩み続けることを要求されるのだ。
 そんな中、主人公のトムは、自問自答しながら判断し、自分にとっての正義と悪とを見極めようとする。母や愚かなアリスの言葉に耳を傾けられる柔軟さを持ち、他人の価値観に決して流されず(師匠の言いつけに逆らうことも/汗)、自分の信念が決してぶれない。そして信念に従って行動する姿は、とても好ましい。まだまだ修行を始めて半年の、半人前なのにー(笑)。
 師匠の過去のこと、トムの母のこと、そしてアリスのこと。物語は今後、どう展開していくのか。とーっても楽しみ。本当に一筋縄でいかないファンタジーで、だからこそ、大好きー♪
[作中、トムの両親の出会いがトムの父の口から語られるんだけど、なんとなく違和感。トムを産むために結婚したんじゃなかったの?]