本日の読書 イーエン・リー『千年の祈り』 

千年の祈り (新潮クレスト・ブックス)

千年の祈り (新潮クレスト・ブックス)

 読まなくちゃいけない本があったのに、パラパラと読みだしたら止まらなくなって一気読み。
 10篇収録された短編集。だけど、ページ数が短いものの、どれも登場人物らの人生が、中国という国が歩んできた歴史の重みが、ぎゅぎゅぎゅっと凝縮されて詰まっているので、とても読み応えがある。静謐でさらりとした文章ながら、描かれるものは奥深く重い。登場人物らが抱える孤独。透明な哀しみを湛えながらもトーンは明るく、なんか、もう、、、読んでいるうちに胸の奥底からこみあげてくるものがあって、たまらなくなってきてしまう。
 琴線に触れたのが、「ネブラスカの姫君」「死を正しく語るには」「千年の祈り」、物語の面白さを感じたのが「あまりもの」と「不滅」。
 この作品を読むまで、現代の中国にまったくと言っていいほど興味関心を抱いてなかったことに気づき、愕然としたんだけど、今現在も変わりつつある中国社会のようすがこんな風に小説で読めるなんてー。政治的混乱に翻弄され、ただあるがままを受け入れざるえない人々。親世代と子世代の対立が、古い中国と新しい中国との価値観の衝突へと重なるなんて、ものすごく面白いと思ったし、興奮した。
 この興奮を忘れないように、イーエン・リーの名前を、忘れないようにしようと思う。