有栖川有栖『女王国の城』
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/09
- メディア: 単行本
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なかなか入れてもらえなくて、ようやく入ったと思ったら今度はなかなか外の出してもらえない「不思議な国」を舞台にした「クローズド・サークル」もの。密室が密室として成り立つゆえん、「なぜ警察を呼べないのか」など、読んでいる最中にふつふつと湧きあがってくる疑惑の数々が、最後で一本の線へとつながり回収されるさまは美しすぎるほど美しくお見事。「ああ、それすらも伏線だったのね!そういうことだったのねっ!」些細な事柄やら何やらすべてが腑に落ち、読み終えて気分がすっきりする大変読了感の良い作品だ。
物語の舞台となるのが、1990年5月という陰りが見え始めてきたけど、まだバブル景気のさなかというのがものすごく効いてる。携帯がまだ爆発的に普及する以前、怪しげな宗教団体がまだ宗教団体として社会に容認され、威力があった時代。そんな時代に起きた、宗教都市の中の総本山の中で起きた事件。ま、物語の舞台が1990年5月と、この後にやってくる時代のことを思うと、必ずともめでたしめでたしで終わらなそうな雰囲気がひしひしと。なんかいろんな含みを持たせてる感じがする。
なかなか物語が動いてこない不満も、最後でどっかに飛んでっちゃう!(笑)幸せな気分で本を閉じましたとさ。(なかなか姿を見せない女王さまがあーんなことになっていたとは!だから、だったのね!!おーなるほどーーー!!てっきり[犯人とつるんでる&出産のため]だと思ってたわ)
アリスとマリアの関係も…むふふだし、雰囲気を盛り上げるためのペダントリーも好ましく(やっぱりp.100〜104はどうかと私も思ったけど/汗)、カフカ「城」が読みたくなったのは、私…だけ?(汗)
あと長編1作でこのシリーズが終わってしまうのが惜しい作品だった。江神先輩が素敵すぎる。次回作が早く読みたいような、読みたくないような、、、ぐすん。江神先輩との別れ絡みの物語なんでしょうね、きっと。