大崎梢『片耳うさぎ』

片耳うさぎ

片耳うさぎ

 なんというか、、、地味な話だなと思った(苦笑)。主人公は小学6年生の奈都。父親が事業に失敗したせいで、住み慣れた東京を離れ、父親の実家に居候することになった。父親の実家というのが由緒ある地方の名家で、何部屋あるのか判らないほどのお屋敷だ。父親は仕事の関係で海外におり留守中で、母親は自分の母親の具合が悪く実家に戻ってしまい不在。祖父、大叔母、叔父一家がいるものの、慣れない環境で一人心細い奈都は、クラスメイトのおねえさんであるさゆりに、母親が戻ってくるまでお屋敷に泊まってもらうことにする。お屋敷に興味津々のさゆりと、屋敷を探検中に奇妙な出来事と遭遇して、、、。
 田舎ゆえの因習や血縁の因縁を盛り込んでいるところは、まるで横溝正史のよう。客観的に見ればかなりドロドロしてヤな話なのに、探偵を務めるのが小学生で現代が舞台なので、ドロドロもあっさり目、読了感爽やかないい話になっている(笑)。何気に少女の成長ものでもあるし。
 ただ用意周到に伏線を張ってるのでしょうが、何が解かれるべき謎なのか、なかなか見えてこないのが読んでいてもどかしい(この本を読む前に、否定的な感想を多く見かけたのだけど、それも納得!)。ラスト間際になってバタバタと物語が動いて、なるほどねと唸らされるんだけど。
 しっかしクライマックスでの奈都を見ると、とてもじゃないけど冒頭で一人になるのが怖いと怯えていた子と同一人物とは思えない。小学6年生という年齢設定にさりげなく疑問を感じる。幼いのか大人びてるのか、どっちかにして!そうそう[奈都が片耳うさぎでも良かったのでは?]そういう展開にはならず、単なるいい話で終わってしまったのが残念だ。