津原泰水『ルピナス探偵団の憂愁』

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

ルピナス探偵団の憂愁 (創元クライム・クラブ)

 物語は、ルピナス探偵団のとある人物の葬式のシーンから幕を上げる。四編収録された連作ミステリ。
 元は講談社X文庫で発表されていた作品とは思えないほど、大人向けの本格ミステリの雰囲気。でも、ミステリの謎解きの物語としてよりも、青春小説としての出来栄えが素晴らしい。ビデオテープで映像を巻き戻していくかのように時間を遡って行く構成がお見事。ラストシーン、彼女たちの行く末に何が待っているのか判っているだけに、胸が締め付けられるかのように痛くて切なかった(涙)。[遠景で登場する人物で、第四話と第一話が繋がっているのが心憎い。彼女たちが卒業してから過ごした7年をその人物はどう過ごしたのか。彼女たちのように友人に恵まれ、刺激的な学園生活を送ってきたのか。そんなことを考えて、ついしんみり。そしてこの「〜憂愁」の陰の主役は摩耶だね。彼女の存在感がものすごく大きくて強い。どの話でも彼女の言動の一つ一つに、つい注目してしまう。]

 「ルピナス探偵団」って人生における黄金時代の物語だったのねえ。作者自らがこんな風に、自らの生み出したキャラクタシリーズにケリをつけるとは、なんと潔いことだろう。かけあい漫才みたいな息が合った彩子&キリエ&摩耶の女の子三人組のおしゃべりは相変わらず面白かったし、明晰な祀島くんの名推理も冴え渡っているし、できれば続く物語も読んでみたいけど。
 どうせなら、前作品を読み返してから、その流れでこの作品を読めばよかった。

ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)

ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)

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