エリザベス・ボウエン他『猫は跳ぶ』

猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)

猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)

 表題作であるエリザベス・ボウエン「猫は跳ぶ」が読みたくて、借りて読んだ。“イギリス怪奇傑作集”とサブタイトルにあるように、どれも粒揃いの恐怖だった。怖いよー!でも、面白い(笑)。
 収録されているのは9編。SF的要素のあるものから、古典的な怪談、民話伝承から着想しているんじゃないかと思われるもの、史実に材をとったもの、心理描写の妙でじわじわ恐怖が寄せてくるものなどなどバラエティ豊か。しかもどんなところに人間は恐怖を感じるのか、そのツボをどの作品も的確に突いてるので、怖いったらありゃしない。「姿が見えない、けどしっかと存在する幽霊」ネタに、弱いのかも、私(汗)。ま、中には、今の私が読むと、読み始めた途端にオチが判っちゃう話があったり、肝心の話に入るまでがむちゃくちゃ長いわ、やたらもったいぶってる話があるわでイライラするものがあるものの、舞台背景となる当時の光景が鮮明に浮かび上がってくる独特の語り口の文章に魅力があるし、来るぞ来るぞ来るぞっ!と身構えてると、期待を裏切らずに怖がらせてもくれるところが、魅力的だ(笑)。
 印象的だったのは、猫が出てこない(笑)ボウエン「猫は跳ぶ」に、最後の2行に震えあがったヘンリー・ジェイムズ「ある古衣の物語」、まるで山岸凉子キャラな奥さまにうなされそうなファニュ「マダム・クロウルの幽霊」、ごちゃまぜの妙味というか絵的な面白さというか、ヘンな魅力全開なケイベス「月に撃たれて」などなど。全部の作品を読み終えてから表紙を見ると、うげげげげっ。ぞっとする(怖)。
 いやあ。怖かったけど、面白かったー。やっぱ怪奇小説はいいなあ。『イギリス恐怖小説傑作選』に『怪談の悦び』も掘り出して読もうっと♪