チェーホフほか『諸国物語』

諸国物語

諸国物語

 さすがの分厚さに読んでも読んでも終わらなくて、読了するまでにまる2日以上かかってしまった(汗)。どれも粒揃い、珠玉の作品が全部で21編収録された世界文学アンソロジー。大好きで思い入れの強い作品、有名な作品ながらも未読だった作品、名前すら知らなかった作家の作品など21編が収録されていて、それがこの1冊で読めてしまうのが素晴らしい。しかも新訳はちょびっと。二葉亭四迷森鴎外による翻訳作品が読めて、大満足!!!この1冊の本から、ぐんと読書が広がりそうな気がする。
 詳細な感想は別宅で…もしかしたら書くかもしれないので、こちらでは簡単に。
 ポプラ社HPより
 http://www.poplar.co.jp/shokoku/
 モンゴメリ「争いの果て」は、『アンの村の人々』に収録されていて、むちゃくちゃ大好きだった作品。中学生だった私はヒロインのぼやきの数々に、影響されまくったっけ。この二人はとんでもない年寄り(失礼)同士のカップルだと思い込んでいたけど、ヒロインが38歳、相手の男性が43歳だったとは!100年ほど前の価値観と現在の価値観との差に、愕然としてまする。
 お初の作家であるルゴーネス「ジュリエット祖母さん」もめっちゃ良かった。長い年月を経てようやく魂が共鳴しあい、ついにその「時」がきたというのに。時とはなんと無情で残酷なのか(と、最後まで読んでようやく、「ジュリエット祖母さん」のタイトルの意味が分ったわ/汗)。
 ストリンドベルヒ「一人舞台」が森鴎外訳!特徴のある訳文の作品も味があっていいなあ。
 明らかにそれまでの作品とは小説の手法が違うジョイスは、私にとっても初体験。ちゃんと読めるのかどうか身構えながら読んだけど、大丈夫。楽しく読めた。ほっ。この短編が収録されている『ダブリン市民』が、むちゃくちゃ読みたくなった!!
 荒川洋治さんの書評エッセイで紹介されていて読みたかった『水晶』が読めて、とても嬉しい。うんうん。これは珈琲が存在感ありあり(笑)。思いやる兄妹同士の健気さも良かったけど、何よりも自然の描写が素晴らしい。自然描写が延々と続くのに今の読者も飽きさせないとは!さすが名作!
 メルヴィルバートルビー」は奇人変人な男に振り回される主人公の物語。どんなオチがくるのかと奇妙な味の物語を楽しんだが、、、まっとうでしんみりするオチだった。
 私にとっての目玉は、何といっても二葉亭四迷訳のツルゲーネフ「片恋」ですよ!鴻巣友季子『明治大正翻訳ワンダーランド』を読んで、どんなもんかとずっと機会があったら読みたいと思っていたので、実際にこうして読めて嬉しい〜♪明治時代に書かれたのに、想像していたよりも読みやすい。「酢乳って何だよ!」訳語として当てられてる言葉自体が分らなかったり、今じゃこんな言い回しはしないだろうと私でも思う箇所もあるものの、たぶん今どきの翻訳で読んだら、一か所も引っかかることなくさらりと読めてしまうんだろうなあ。ごつごつしてるけど味がある訳文で、初めて読む「片恋」が二葉亭四迷のもので、本当に良かった。昔の翻訳て、原作と一緒に翻訳者のカラーも味わうものだったのかも。ただ、最後の方に出てくる手紙が私には読めなかったので(爆)そこだけは新訳で読んで確かめてみようと思ったけどね。
 ひさびさに読んだ「園遊会」は、、、やっぱりよかった。ぐすん。“マンスフィールド園遊会」”と聞いただけで泣けてしまうかも。収録作品で思わず泣かされたのは「園遊会」と「水晶」の2編でございました(照)。
 私が読んでないだけで、この世の中には名作がまだまだたくさんあるんだなあが本当のところ。年齢を問わずに、楽しめる一冊。お値段がちょっとお高めだけど、一家に一冊、ですかね♪できることなら第二弾もお願いしたい。