梨屋アリエ『夏の階段』

夏の階段 (teens’ best selections)

夏の階段 (teens’ best selections)

 ピュアフル文庫のテーマアンソロジー集に収録された短編をまとめ、書き下ろし作品をつけて収録した本。結果的に連作短編集になっている。
 地方都市の進学校である巴波川高校に入学した新高校一年生の男女5人が主人公。思春期真っ最中の5人がある時は背景になり、またある作品では視野人物となることによって、それぞれがそれぞれに抱える重たい事情が繊細かつ絶妙に浮き彫りにされる。新生活への不安と戸惑い、恋のこと、進学のこと、友情のこと、将来のこと、、、。
 5人が5人とも、他人からの見た目と当人の内面というか実像とのギャップがあって、読んでいてものすごくおもしろかった。5人それぞれの性格を文体でも書き分けていた作者の力量にも、感心させられたし。
 読んでいて一番胸がチクチクしたのは、オオトリである遠藤パートかな。なぜ彼女が自分を演出しなくてはならなくなったのか。言葉にするのが難しい感情をまるで痒いところにちゃんと手が届くかのように、的確に表現する文章がものすごく気持ちよかった、、、て、ひりひり、胸が痛む話なんですが。
 思春期で人間関係に悩みドツボにハマってる人間には、ものすご〜〜〜っく共感できる作品ばかりだと思う。「そうそう、そうなのよ!よくぞありりん、書いてくれた!」て、私が高校生だったら感激してファンレターを書いてしまいそう(笑)。もう一度こんな風な思春期のモヤモヤに鬱々を味わってみたくて「高校生、やり直したいー」読み終えて叫びたくなった(けど、実際になったらしんどそうなのでパス/汗)。はううう。やっぱありりんはスゴイな。
 県下で2番目か3番目…てことは、巴波川高校はあの高校がモデルなのかな?なーんて、ちょっとだけ土地勘があるので、あれこれ想像しては楽しんでるのであった。リンクしてる人物がいるってことだし、積んでる『でりばりぃAge』も読みたい。