道尾秀介『カラスの親指』

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

 予備知識なしに読んだ方が絶対にこの本、面白いよなあと思いつつ、でも何か一言言いたくてたまらなくなる、そんな作品かと。面白かったーまんまと騙された!!
 前作『ラットマン』は「何かあるぞ何かあるぞ…」注意深く読んでいたのに「そうくるか!」の驚きがあったけど、この作品は「まあ、最新作はコン・ゲームなのね…」この作者なら絶対に何かあってしかるべきなのに、迂闊にも油断しながら読んだ分だけ、最後の最後で明かされた真相には心底たまげた。恐るべし!道尾秀介の才能!
 簡単に言うと

「劇の内容が書いてありますよ。『暗い過去を持つ詐欺師。哀しい旅路の果て、彼は初めて心を許せる友と巡り合う。彼らと運命を共にする一人の美女。それぞれの過去を清算するための闘いが、いまはじまる!』――はは、どっかで聞いたような話ですね」  p.98

なお話。仕掛けたコン・ゲームが成功して、無事詐欺師コンビは過去を清算できるんだろうか。そんな興味で読んでいると、、、今まで見ていた世界が最後、反転するんですもん。
 そうくるか!まんまと騙された!あれもこれもそういえば伏線だったのね!
 でもまんまと騙されて悔しいというよりは、後味すっきりで気分爽快。すごく楽しめたし、面白かった。上質のエンタメ作品でコン・ゲームの傑作だと思う。年末の「このミス」でも上位にランクインしそうだ。
 ただ、「向日葵〜」など後味の悪い作品が好きなので、毒が欲しかったな。この路線で行かれるのだったら、ちょっと惜しい気がするな。
 そうそうタイトルに因んだのか、章タイトルが鳥の名前なのも心憎い。にんまり。ちゃーんと理由があったんですねえ。