矢野隆『蛇衆』

蛇衆

蛇衆

 第21回小説すばる新人賞受賞作。読み終えた知人に「守備範囲外だと思うのでお勧めしない」と言われたけど、ヘソ曲がりなので読んでみた(笑)。
 室町時代末期、金で雇われて戦で人を殺す傭兵集団「蛇衆」があった。筑後と肥後の国境近くの鷲尾家と隣接する我妻家との戦に傭兵として雇われた蛇衆は、ひょんなことから血で血を洗う鷲尾家のお家騒動に巻き込まれていく、、、。
 お家騒動について言及されるためか前半はさほどスピード感を感じなかったが、戦闘シーン、そして後半から終盤にかけては畳み掛けていくかのようなスピード感も迫力もあって、読んでいて興奮した。
 物語はともかく、世が乱れ出した動乱の戦国時代を背景に、蛇衆が、どこにも居場所がないはみ出し者同士が寄り添ってできた家族のような集団なのがいい。頭目の朽縄を始め、十郎太、鬼戒坊、孫兵衛、夕鈴などキャラ立ちしているので、映像化して2時間ドラマにしたら面白そうだ。ただ、蛇衆の面々の背負った過去の描き方出し方が唐突なように思えたかな。もう少し掘り下げて書いて読ませた欲しかった。
 迫力ある戦闘シーン、虚を突かれる思いがけない展開に「おおお」唸らされる場面もあるので、普段時代小説を読まない人でも読みやすいかも。