前田珠子『天を支える者緑の糸をたどって』

緑の糸をたどって―天を支える者 (コバルト文庫)

緑の糸をたどって―天を支える者 (コバルト文庫)

 緑の章は4巻構成になるそうで、その2巻目。その大半でナルレイシアとウォルセン、手に手を取って追手から逃げに逃げまくってる(笑)。
 この巻の収穫は、ウォルセンが何故女装してまで身を潜めねばならなかったのか、その理由と因縁深い某人物(アッシュ)の存在がそれとなく仄めかされたこと。次巻で華々しくご登場されるようで、感動(?)のご対面シーンを今か今かと待ち焦がれている(笑)。
 それにしても、、、ナルレイシアの影響なのか、麗しのファティ・リンシャさまがずんずん壊れていくのがなんとなくいや〜ん(笑)。

多崎礼『〈本の姫〉は謳う 2』

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)

 
 これまた4部作の2巻目。ようやくこの「本がスタンプ」な異世界に、“天使還り”アンガスと姫の文字(スペル)回収の珍道中と、「俺」の物語とが交互に綴られるこの物語に、慣れてきた気がする。
 アンガスが封印してきた過去との対峙、そして決別。過去が明らかになったことで、今まで交わることがなかった二つの物語に接点が生まれ、俄然物語が面白くなってきた。セラちゃん…素晴らしすぎる(笑)。[やっぱり「俺」の物語は、アンガス前世の記憶アークは「俺」に似せて地上で作られたのかしらん?って最大の謎は姫の存在。姫って一体何者ー?文字をすべて回収すると、何が起きるんだ?遺跡にしたって…気になる気になる〜!!
 二つの物語が一つに繋がり、すべての謎が解き明かされるまであとちょっと。そう待たされることなく、続きが読めますように。こんないいところで「以下、次号」だなんて、辛すぎる(涙)。

平安寿子『セ・シ・ボン』

セ・シ・ボン

セ・シ・ボン

 今から30年ほど前にパリに3ヶ月間の語学留学をした平さんの、その当時の思い出を描いたエッセイ風の文章だ。平さん…じゃなかったまだまだ26歳と若いタイコがパリで見聞きし知り合った人や留学生仲間との交流を描く筆致はユーモラスで明るいが、、、単なるセンチメンタルな留学ものではなく、30年経った今だからこそ書けるほろ苦さと人生の重みがある。「アンブラッセ!アンブラッセ!!アンブラッセ!!!」「思い出はセ・シ・ボン」と胸が熱くなった。
 そして、あとがきがとても素晴らしい。私にもいつか封印した過去を認め、あの過去があったから今の私があると肯定して言える日が来るんだろうか。

 生きるとは、想い出すこと。人は、想い出すために生きる。  p.162