平安寿子『セ・シ・ボン』

セ・シ・ボン

セ・シ・ボン

 今から30年ほど前にパリに3ヶ月間の語学留学をした平さんの、その当時の思い出を描いたエッセイ風の文章だ。平さん…じゃなかったまだまだ26歳と若いタイコがパリで見聞きし知り合った人や留学生仲間との交流を描く筆致はユーモラスで明るいが、、、単なるセンチメンタルな留学ものではなく、30年経った今だからこそ書けるほろ苦さと人生の重みがある。「アンブラッセ!アンブラッセ!!アンブラッセ!!!」「思い出はセ・シ・ボン」と胸が熱くなった。
 そして、あとがきがとても素晴らしい。私にもいつか封印した過去を認め、あの過去があったから今の私があると肯定して言える日が来るんだろうか。

 生きるとは、想い出すこと。人は、想い出すために生きる。  p.162