今朝の読み終わり

ラ・パティスリー

ラ・パティスリー

 著者の上田さんが小松左京賞受賞作家だから、『西洋骨董洋菓子店』みたいな話と見せかけて、ぢつは…の部分があるのかと思ったけど、すとんと最後まで普通の小説で終わってしまったのが、ちょっと残念な作品。正統派フランス洋菓子店の舞台裏や、お菓子作りの現場の空気が丁寧に書き込まれてきて、ついついロワゾ・ドールを探してみたくなる。季節が移るごとに店先に並ぶケーキの数々も、たまらなく美味しそうだ。
 店を舞台にして起こる悲喜こもごものエピソードと、“突如として現れた謎の菓子職人市川恭也とは、一体何者なのか”全体を通しての謎とが絡み合うようすも面白く読んだ。でも、、、実際にそんなことがあるんですか?「バレンタインデー」に思わず胸がずきり。夢を実現せんと懸命に頑張る夏織の姿がとても眩しい小説でした。読了感、とても爽やか。上田さんの他の著作も読んでみよう。来年の目標ね。