昨日の読み終わり 角田光代ほか『Sweet Blue Age』

Sweet Blue Age

Sweet Blue Age

 いや〜。この人気作家7人による青春小説アンソロジー集、すんごくいいですね(*^^*)。最初の角田光代「あの八月の、」で心臓を鷲づかみに。深夜の大学に忍び込んで、何をするのかと思ったら!過ぎ去った日々への郷愁をヘンに美化しないで、苦々しかったり赤面したくなるような生々しい感情として見せてくれる。もし私の学生時代の光景を撮ったフィルムがあって、それを今の私が見るとしたら…ああ、きっと気恥ずかしくって冷静に見れないかも。。。やっぱ角田さんはスゴイわ!
 有川浩「クジラの彼」は『海の底』のサイドストーリ。あの彼のその彼女とのラブストーリ。彼女側からの視点なんですね。歯切れの良い文章はすごく読みやすいし、ずばりハマるような言い回しが随所にあるんだけど…わー。人物造形がダメダメ。肌に合わないー(涙)。レディコミを読んでるみたいでむず痒くなってくる。有川作品を面白いとは思うものの、でもなぜ手放しで絶賛できないのか、その理由がこの作品を読んで、判った気がする。。。
 日向蓬「涙の匂い」は思わぬめっけもの。執筆陣の中で、唯一名前を知らなかった人なんだけど、東北のとある町で過ごした中学生だった日々を描いてポイント高し。父親の左遷で越してきた田舎町にじょじょに馴染んでいくんですが、それにつれ次第に見えてくる閉塞感、淡い恋、性についてなどなど、生臭くならないよう踏み止まって、切ない郷愁の物語にまとめてるところがいいですね。R-18文学賞の大賞受賞者なのだとか。他の作品も読んでみようっと。
 三羽省吾ニートニートニート、何ともいえない面白さ。この題名って[「住所不定無職」「住所未定無職」そして「情緒不安無職」]の意味だったのか。バカウケ。ひとまずドロップアウトしてみたけれど、行き先が見つからず、体力だけを持て余し、堂々回りしてる胸のうちのまんまに無軌道に行動してるのね。無駄にハミ出してる若さがすんごくいいよ〜!それにしてもバカだアホだ!>レンチ!これ、最後の一文がいいですね。皮肉に響くけど、そのものずばりなんだもん。いつか大人になるのかな? いやいや。このままバカな若造のままでいて欲しいぞ!(ちょこっと金城さんのゾンビーズの面々を思い出した)
 坂木司「ホテル・ジューシー」。この主人公、性格的に南を目指すより北を目指した方が良かったんじゃない?基本設定は面白いと思ったものの(ガチガチの長女気質)、せっかくの設定が生かしきれないまま、物語が終わっちゃったのが残念。ストーリも単に「いろいろあって、ちょっと性格が丸くなりました」じゃん。意外性がまるでなくてツマンナイ。これを導入部として、もっともっと話を膨らませて読ませて欲しい。物語はこれからだ。
 桜庭一樹「辻斬りのように」!ああ!これは面白かった!なぜ旭川が舞台じゃないとダメなのか意味不明だけど、寓話みたいな雰囲気が好み。読んだ事ないのに、CLAMPの「XXXHOLiC」を思い浮かべながら読んでました。白っぽい丸の自分を男遊びして変えたくなったのは、隣の席のあの人への思いゆえかしら、、、。もしかして最新刊の『少女七竈と七人の可愛そうな大人』の元になった話かな?と思ったんですが、どうでしょう。
 森見登美彦夜は短し歩けよ乙女。きゃーきゃーきゃー!すんげー好き好き。青春小説…か?という疑問があるものの、のたうち回って笑い転げながら読んでました。私バージョンもいい味出してるけど、彼女の乙女バージョンが絶品! 「アリスinワンダーランドin京都の夜」というか「百鬼夜行in京都の夜」というか「5月の京都の夜の夢」というか。突如として出現した不可思議なもう一つの京都の街。その異界の不可思議な夜をこうも艶やかに見せてくれるなんて。ああ、もう私、一生森見さんについて行こうっと(って迷惑でしょうが/汗)。 これから私、愛ある“おともだちパンチ”を心がけますわ(笑)。私と乙女の彼女の間に、これから何かが芽生えるのでしょうか。ちょっと心がときめきます。
 という訳で、“角田&森見作品が双璧、日向蓬は意外なめっけもん。やっぱり桜庭&三羽作品はなんともいえない味があって面白かったよ〜”な結果となりました。あー。とっても楽しい読書が出来て、私は幸せ(*^^*)。