本日の読み終わり 吉田修一『初恋温泉』

初恋温泉

初恋温泉

 「この温泉に泊る人はどんな人?」そんな興味から話を膨らませ描かれたような温泉という非日常の場で繰り広げられる5組の男女の恋愛模様。5編のそれぞれ物語のテイストや温度が異なり、それぞれがほっこり、時には苦く切なく、心に沁みてくる。温泉だけじゃなくこの小説も、体に効用がありそうだ。
 どの物語(温泉)も心と体に効くのだけども、個人的には「風来温泉」それに「純情温泉」が印象に残った。「風来温泉」の次、作品集の一番最後に「純情温泉」を配置するなんてー!なんて配置が巧いんだー!脱帽。描かれる「純情」が初々しくって、汚れちまった私にはすっごく眩しく映りましたです。「白雪温泉」の静寂も忘れがたし。この温泉には実際に行って浸かってみたいものだ。
 それにしても吉田修一ってなんて小説が巧いんだ。「ためらいの湯」のW不倫カップルが引きずってる結婚という名の日常の描き方が、「そうそう、たわいもないけど結婚て夫婦ってそんなものなの」とても自然で唸っちゃった。