本日の読み終わり 車谷長吉『文士の生魑魅』

文士の生魑魅

文士の生魑魅

 私にとっての初車谷長吉作品。期待せずに読んだけど、この本、すんごーーーーーーーく面白かった!新鮮な切り口でテーマごとに文芸作品を引用しつつ紹介するブックカイドなんだけど、車谷長吉の強烈かつ独特の個性が反映されているから、一筋縄じゃいきません。痛快、ただただ痛快。車谷長吉本人の顔が随所に顔を出すせいで、紹介された文学作品はもちろんのこと、作者自身にまでいつの間にか魅せられてしまいます。くすくす。
 文章から車谷さんが“偏屈で気骨ある最後の文士”という印象を受けるんですが、時折ひらめかせる無邪気さとの落差がたまりません。作家によって呼び捨てになったり、“さま”づけになる(笑)ところや、好きな作家・作品は世評とは無縁にとことん褒めるところ、文学や社会に向って毒ついたりするところなどなど(笑)。
 遅くにもらった奥さんのことを大切に思ってるところもいいですね。何度も何度も登場する「嫁はん」を見るたびに、心がほっこり温かくなります。
 本作品は『文士の魂』の続編なのだとか。『漂流物』収録の「木枯し」ともども、ぜひ読んでみたいです。