本日の読み終わり 北村薫『ひとがた流し』

ひとがた流し

ひとがた流し

 新聞連載をまとめたものだと読み終えてから気づき、至極納得。北村薫の小説の巧さがきりりと光る、とても端正な小説だった。
 昔からの友人関係にあり、三角形をなす女性3人が物語の核にあって、語り手を変えながらそんな彼女らの日常が淡々と綴られるのだけど、小説が進むうちに、彼女らが歩んできた人生がくっきりと浮かび上がってくるところがいい。3人が3人とも、人生の苦渋を舐めてきたからか、背筋がぴんと伸びた、凛々しい女性ばかり。いつしか単なる友人以上の近しい存在になった、固い絆を結んだ彼女らのことが羨ましくなってくる。強くそう思ったのが、三角形をなす友人関係の一点が失われそうになってから。
 6章まであって、各章の中で、些細なものから重要なものまで、何か一つは必ず謎が解ける趣向や、視野人物の交替がモノを贈り贈られる…まさしくバトンタッチされる趣向など、しみじみとしてどちらかというと静謐な物語の中にもお遊びがあって、そんなところが面白かったし、見つけるのが楽しかったです。
 そうそう、さきちゃんと牧子さんて、あの北村作品にて既出なんですってね。この作品が続編でもあったのか。先行する作品が未読なので、ぜひとも早いうちに読もうと思ってます。