本日の読み終わり 車谷長吉『世界一周恐怖航海記』

世界一周恐怖航海記

世界一周恐怖航海記

 最愛の嫁はんに一人ぼっちで置き去りにされるのが怖くって、渋々一緒に生まれて初めての世界一周の船旅に出た車谷長吉による航海記。…。ちょっと前に読んだ『文士の生魑魅』とほとんど一緒なんですが(汗)。文学を語ろうが、航海記を書こうが、まったく文章の姿勢が変わらない車谷さんに痺れました(笑)。どこまで行っても車谷長吉車谷長吉(笑)。心弾む観光記を期待して読まないほうが賢明かも(こんなところまで偏屈とは/汗)。
 奥さまである高橋順子さんのことを心底惚れ抜いていて、しょっちゅう態度や言葉で愛情表現するのは微笑ましいのですが、反面、乗船客に毒づき、あまつさえ実名を挙げて恨みつらみを吐き出してるようすには「だ、大丈夫なの〜?」ハラハラしました。うーんエキサイティング!(笑)かと思うと、お世話になった方、ベトナムの路上で見かけた掃除婦に聖人をみたりと、邪念のない(ように見える)人へ向ける眼差しがとても優しくて、作家の魂とはかくも偏狭で偏屈であるのか!再認識したように思いました。
 読み終えて『鹽壺の匙』『赤目四十八朧心中未遂』が読みたくなった私です。