最近の読書 姫野カオルコ『コルセット』

コルセット

コルセット

 「わたし」が物語る4編の官能の物語。朝っぱらから読み始めたんだけど…思いっきし朝っぱらから読むような話じゃなかった!(滝汗)
 冒頭の作品は恋愛小説というよりも、官能を刺激するまさに女性のための官能小説の雰囲気。滴るかのように濃厚かつ濃密な空気。なのに生々しくも下品にもならず、そればかりか高潔さを感じさせるところに、ついついうっとり。
 続く物語は…ああ、二つ目の作品から全体の流れみたいなものが見えてくる。二つ目の話ったら!(まるで森茉莉だよ!それも「日曜日には僕は行かない」辺りの作品を、女性視点で語り直したみたいな面白さがある)きゃあきゃあ。最初の話でかき立てられた官能の質が変わり、かつ一気にクールダウン。生活に倦んだ末のストイックさというか、快楽から隔絶されたところにある「わたし」の空虚さが、印象的な作品でした。
 三つ目の話の「わたし」に深く共感しながら、(女子高生は女子高生ゆえに価値がある)を使うものの、ありふれた話にせず、こんなに面白い、けどほろ苦い恋物語を織り上げてしまう姫野さんの才に、ただただ感嘆しちゃった。後になって思いついたんだけど、この話って(まるで「女子高生」という魔法を使ったのに王子様を射止め損なったシンデレラの物語じゃない?
 最後の四つ目の話は!まるで縁まで水が注がれたグラスに、それでも少しづつ水を注いでるみたい。表面張力でまだこぼれ出さずにいるけど、このままでは確実にこぼれ溢れ出してしまう。いつ溢れ出してしまうのか。それとも溢れ出さずに終わってしまうのか。張り詰めた空気に、こちらの胸までドキドキしてきちゃう。そして…ラストの鮮やかさにもうっとり。いいっすねー、やっぱり。姫野さんの小説は!
(悪いけど、男性には読んでもらいなくない作品だな。女性だけのひめやかな愉しみって感じ/笑。旧仮名遣いで綴られた文章で、ぜひ読みたかったなー)
 もしコミックス化されるのならば、ぜひとも名香智子さんにお願いしたいです。
 しっかし、やたら藤沢さんが登場しますな。なぜ?(笑)
 私はついうっかりあとがきを先に読んじゃったんだけど、姫野さんがこの作品集についてかな〜り語っちゃってるので、予備知識なしに「?…!!」楽しみたい方は、あとがきは一番最後のお楽しみにとっておくのが賢明です。
 それにしてもすんごく良かったよ〜。今までに読んで大好きだった恋愛小説『ツ、イ、ラ、ク』と、手法を変えてるところが新鮮だったし、この企ても効いてるますよね。永遠に読み続けていたいという誘惑と戦いましたよ(笑)。装幀も溜め息が出ちゃうほど素敵だし、自分で買って手元におきたい作品集ですな。