本日の読書 椎名誠『銀天公社の偽月』

銀天公社の偽月

銀天公社の偽月

 7編収録の連作短編集。冒頭の短編「滑騙の夜」のタイトルからして、椎名ワールド全開!すんごく久しぶりに読む椎名誠の小説を堪能しました。  
 最後の作品だけ判断がつかないものの残る6編は、切り取って描くシーンが異なるものの、世界観がまったく同じ。―脂雨が降りしきり、世界は少しづつ水没しつつある。空には銀天公社の偽月が昇り、長期化した戦争は惰性でまだずるずると続き、あちこちに戦争の傷あとが残る―この設定がしっかりしてるので、読んでいるうちに物語を追う面白さと、この世界観に浸り、仕組みが少しづつ判ってくる面白さとに、快感を感じてしまう。うん。面白かったです。
「どこが“百年後の純文学誕生!”なんだ!SFじゃん!」と謳い文句に文句が云いたくなるけれど(笑)。今なら、かつて生理的に受けつけなかった椎名誠のSFが読めるかもしれない。ぜひ読んでみたいと思います。(後日談。この本が刊行されるちょっと前に発売された『砲艦銀鼠号』に、この本の「水上歩行機」に登場する灰汁発見。リンクしてるのかー!どうやら『武装島田倉庫』ともリンクしているらしい。SF3部作ごと読まねば読まねば!)
『砲艦銀鼠号』については、こちら。
 http://subaru.shueisha.co.jp/html/books/bo0607.html