本日の読書 ケヴィン・ヘンクス『オリーブの海』

オリーブの海

オリーブの海

 マーサは12歳。気にもとめていなかった同級生であるオリーブの死を告げられて、マーサにとっての特別な夏が始まる、、、。
 少女から大人の女性へ。そのステップを踏み出すことになるあるひと夏の出来事を、きらきら輝くような瑞々しい筆致で描き出した作品。この作品こそ、思春期の頃に読みたかったなー。自分が、マーサの目にどうしようもなくダメダメと映る大人の側の人間だということが、悔しくてたまりませんでした。
 物語としては、結構ベタな感じ。日本の少女漫画のがドラマティックだと思う。ただマーサを大きく包み込むような祖母ゴッビーの存在、ゴッビーとのエピソードの一つ一つがすごく素敵なのです。死を予感させるゴッビーの「老い」とオリーブの「死」が繋がって、もの悲しくなるのだけど、暗くはならずに明るく爽やかな描かれ方をしてるのがいいですね。
 ちょうど1歳違いで、時に反発しあう兄ヴィンスとの関係もいいなあ。深いところで繋がってる感じ。こういうの読むと、兄弟っていいなとつくづくそう思う。
 最後まで読んで初めて、なぜこの作品が「オリーブの海」というタイトルなのか判り、と同時に胸がぐわんと熱くなります。この上なく秀逸なタイトルですねえ。じんわり。ひと夏を過ごすことによって、オリーブの死を受け止められるほど成長したマーサが、とても眩しく映りました。最後のエピソードなんて!ついつい感極まって涙が。
 思春期の女の子の些細なことで激しく揺れ動く感情を柔らかく瑞々しく描き出した作品。とても素敵なホンヤクモノのYA小説を読みました。大満足!