本日の読書 小川洋子『海』

海

 クラフト・エヴィング商會による装幀がとても美しい7編収録の短編集(といってもそのうちの2編は掌編だけど)。描こうとしているものは素晴らしいのに、その断片は感じられるのに、感じた瞬間に物語が終わってしまうかのようで、もうちょっと作品の長さが欲しい書き込んで欲しいなと残念に思うような作品ばかりでした。悪くはないんだけど、勿体ない!
 好きな作品の順番は“「バタフライ和文タイプ事務所」>「海」>「ガイド」=「ひよこトラック」>「風薫るウィーンの旅六日間」(>「缶入りドロップ」>「銀色のかぎ針」)”かな。
 「バタフライ和文タイプ事務所」は、『薬指の標本』に通じるような甘やかに官能を刺激する話なので好き好き♪「海」は 鳴鱗琴がいいですねえ。潮風を頬に感じながら、鳴鱗琴の音と波音とが、確かに聴こえました。「ガイド」は日常にすっと紛れ込んだ非日常な不思議な存在が素敵。「ひよこトラック」はラストシーンの鮮やかさに尽きます!安穏とした日常が引っくり返される衝撃と爽快さ!これ、短編小説のお手本のような作品ですねえ!お見事!素晴らしい!