本日の読書 シンシア・アスキス他『淑やかな悪夢』

淑やかな悪夢 (創元推理文庫)

淑やかな悪夢 (創元推理文庫)

 英米女流作家による12編の怪談が収録されたアンソロジー。中には、いかにも古めかしい怪奇談も収録されていたけれど、現代人の私が読んでも「怖っ!」震え上がるような普遍的な怖さをたたえた作品が多々あって、本当に怖かった、、、ぶるぶるぶる。
 評判には聞いていたけど、「黄色い壁紙」がダントツで怖い。じわじわ神経を病んでいくヒロインと同様に、あちら側へいってしまいそうに。背筋がぞわぞわっ。巻末の鼎談を読むと、翻訳でなく原文で読んでみたかったととても悔しく残念に思えてくる(そしたら怖さ、100倍になりそうだけど/汗)。
 私自身がさほど因果応報のホラーに心惹かれないせいもあってか、冒頭のシンシア・アスキス「追われる女」には背筋が凍りそうに。どんな結末を迎えることになるのか、ちょっと読んだだけで判っちゃうんだけど、スピーディかつスリリングな展開&文章で、最後まで飽きさせず読ませてしまう筆力がお見事です。
 ここまで愛ゆえの女の執念というか嫉妬というか恐ろしさを描かれるとお手上げだわねなゴーストストーリがメイ・シンクレア「証拠の性質」。子を持つ母親としては短いながらもぞっとしてしまう話、マンスフィールドの「郊外の妖精物語」もインパクト強し。行間が深いんですよねー。恐ろしく思いながらも小説の上手さに唸りました。
 このアンソロジーを編んだのは、古今東西怪奇小説に精通している3人だから、個人的合う合わないはあるでしょうが、収録された作品が面白くないわけがない!
 女性ならではの優美かつ繊細な描写が、読む人間を震え上がらせてくれる、本当に本当に怖くて恐ろしい怪談話アンソロジーでした。