本日の読書 ジョディ・ピコー『わたしのなかのあなた』

わたしのなかのあなた (Hayakawa Novels)

わたしのなかのあなた (Hayakawa Novels)

 家族とは命とは医療とは。生命倫理について、いろいろ考えさせられる物語。娘の命を何がなんでも助けたい母親サラ、姉のドナーとしての人生から降りたいと願うアナ、一家に不要な人間だとスポイルされて育ったジェシー、サラとアナの狭間で戸惑い悩む父親と、家族それぞれの立場からの言い分が、どれも非常に共感できるんですよね。何が正しくて正しくないのか、正解がある問題を扱っていないので、どんな判決が出るのか、手に汗握りながら最後までハラハラドキドキで読んでました。誰にとっても最善な結果になればいいなあと願いながら。
 なかなかに重たいテーマを突きつける姿勢は買うけれど、安易な結末を用意してしまった作者に対して怒ってしまったよ。また脚色しすぎて、あざとく感じられる部分の存在が鼻につくのがちょっと、ね。ケイトの初恋とか、偏執的で固執しまくるサラとか。唯一バランス良さそうに見えた父親もなあ。がっかり。[ジェシー犯罪を庇うし。このジェシーを庇うところが、私には2番目に許せない箇所だったりする。]枝葉の部分を書き込みすぎて緊張感を殺ぐように感じられる箇所もあるし(キャンベルとジュリアの物語が邪魔)。
 とはいうものの、この本を読むすべての人間に対して「あなたならどうする?」問題意識を投げかけてくる良作です。